気に入った品種の穂木を入手したら、いよいよ挿し木に向けての準備をしていきましょう!
まだ入手していない人はこちらに入手方法と品種選びについてまとめてあります。
イチジクは発根促進剤などの薬剤に頼らなくても挿し木を行うことができるので、特に難しいことはないと言われています。
「土に挿して適宜水を与えながら大きくする」というシンプルな説明をされることになります。
確かにその通りなのかもしれませんが、コツが掴めないと中々上手く育てることができません。
実際にやってみると、色々なタイミングで壁にぶち当たりました…
この記事ではイチジクの挿し木でなるべく失敗しないための情報として「挿し穂の準備と容器の選び方」をまとめています。
自分でやってみて後悔したことや、やってみて良かったことを各タイミングごとにリストアップしてみましたのでご覧ください。
挿し穂の長さと栄養素について
まず穂木の表面に土やほこりなどが付いているとそこから菌が繁殖することが考えられるので、しっかりと水道水で洗浄しておきましょう。
では、穂木から挿し穂を作っていくときの注意点を紹介します。
イチジクは節ごとに体を構成する基本的なパーツ(芽、実、根)の元になる組織がまとまっています。
3節ほどで切って挿し穂を作った時は1節だけを地上に出して、残った節はすべて土の中に埋めるのがよくある方法です。
その時に土の中に埋める部分の芽は予めカッターなどで削いでおくと、限りある栄養を根と1つの芽に集中させることができます。
基本的には埋める節の数が多ければ多いほど挿し木の成功率が高くなります。
発根する可能性のある部位が増えるのは当然として、節が多いと挿し穂自体の長さも長くなるので、挿し穂に蓄えられた栄養素も多くなるからです。
じゃあ、できるだけ長い挿し穂を使えば上手くいきそうだね!
そう思っていた時期が私にもありました…。
その結果がこちらです。
か、枯れてる…?
発芽も発根もして順調だと思っていた矢先に枯れてしまいました。挿し穂の上部が萎れていることからカビが原因である可能性が高いです。
カップを割ってみるとこんな感じでした。
カップの底側に近いほど挿し穂の周りに鹿沼土の泥が付着しているので水捌けが悪くなってカビてしまったのだということが分かります。
カビにやられた…。解決策を考えるしかない
この挿し木が失敗した理由として考えられるのは、
- 容器の排水力が低く水や泥が溜まりやすい環境だった
- 容器に対して穂木が長く、基底部が水浸しになってしまった
という2点だと思っています。
2つを簡単にまとめると挿し穂に対して容器の排水力とサイズが合っていなかったということになるでしょう。
容器の排水性を高めれば挿し穂が長くても水が溜まりにくいので腐りにくくなりますし、穂木を短くするか浅く埋めれば水浸しになることを簡単に避けることができたと思います。
特に今回使ったプラカップには底面の三箇所しか穴を開けていませんでした。
錐で穴を開けただけなので、穴が小さくて排水力が低かったです…
挿し木の失敗の理由は腐らせてしまうことなので、容器の排水性は高ければ高いほど良いことを再確認しました。
枯らしてしまうくらいなら、大きな穴を開けて鉢底ネットを使った方が良かったです。
植え替え時に残るのが嫌で避けたのが裏目に出ちゃったね
今回の反省を簡単図に表してみました。
なぜ下の部分には水が溜まりやすいのかを考えてみると、下の図のような関係性によって引き起こされているのがわかりました。
水量を3段階で考えてみると、水量が多いうちは水の重さによってどんどん押し出されていくのに、水量が少なくなってくると水の重さが減って押し出される量が減っていきます。
図だと水だけなので最終的にはほぼ全てが排出されますが、中に土などが入っている場合は水の表面張力によってカップの中に留まる水が存在してしまいます。
そうなると水の溜まりやすい下の1/3辺りの位置には挿し穂を入れないのが無難だと思います。
次は排水性を極限まで高めて、余裕のある容器で挑戦すると決めました!
挿し木に対するメリットとデメリットの要素を天秤にかけよう
挿し木をするにあたって、使う挿し穂は長いほど蓄えられた栄養や発根部位が多くなるのでうまくいくと思っていました。
発根も早かったし、上手くはいったんだけどね…
挿し穂が長いことによってもたらされるメリットの要素だけに意識を向けすぎて、デメリットの要素について深く考えていなかったのがダメな所でした。
数で見ると明らかに「メリット > デメリット」の状態に見えると思います。
確かに間違ってはいないのですが、全部をまとめて重要度で考えると全く変わってきます。
こう見ると完全に「メリット < デメリット」の状態で、対策しないとわざわざ失敗したい人のような挿し木のやり方になっていました。
敗因はこの私‼︎
イチジクは最高のプレイをした‼︎
容器の底ギリギリの位置で挿し木をしてたのがいけなかったね
この経験から、深さに余裕のある容器を用意して、容器の底から2〜3cmほどは上の位置に挿し穂の基底部(1番下の部分)がくるように挿し木をするのが無難だということがわかりました。
次はこの反省を活かして、挿し穂と容器を何に注意して用意すれば良いかをまとめていきます。
失敗しない挿し穂の作り方
いよいよ穂木のカットの仕方についてです。
実際に挿し穂を切り出すところからシミュレーションをしてみましょう。先に容器の選び方を知りたい場合はこちらで次の項目に飛びます。
まず最初に育てる芽を1つ決めましょう。基本的には挿し穂になった時に一番上に付いている芽になります。
この芽の上の切断面は平らになるように切りましょう。これが地上に出る部分(上部)になります。関しては水平に切る。地下に埋まる部分(基底部)は斜めに切ることがポイントです。それぞれでやる意味があるので解説していきます。
まず上部に関してですが、穂木を水平にカットすることによって空気との接触面積を減らすことができます。その結果として挿し穂が乾燥しにくくなり成功率を減らさずに済むようになります。
切る場所に関しては節よりもできるだけ高い位置で切りましょう。この長さの分だけ挿し穂の持てる栄養素が増えることになります。
水平に切ると保護剤も塗りやすいし垂れにくくなります
育てる芽を決めて切り出しが終わったら、実際に植える容器を使ってどう挿し木するのかの位置調整を行ってみましょう。
この時に気をつけるのが、なるべくストレスが少ない状態で芽が伸びられる向きで植えるということです。具体的には育てる芽が上向きになるように植えて、垂直に伸びていけるようにしてあげると良いでしょう。
挿し木の位置や向きなどが確認できたら基底部のカットに移ります。
挿し木をしたときに地面に対して水平になるように挿し穂を斜めにカットしましょう。こうすることで切断面が下を向くので灌水を行う時に水が直接触れにくくなります。
基底部の切断をするときに節まで切ってしまわないように注意してください。節の周りには箱に重要な組織がたくさん配置されています配置されています。多少水平にならなかったとしても大きな問題にはならないので重要な部分を削ぎ落としてしまわないようにしましょう。
前に書いたように挿し木はいかにカビを発生させないかが勝負の分かれ道になります。なるべく切断面に水が触れないようにするのがこの方法の目的です。
挿し穂の準備がこれで完了したので、次は容器について解説していきます。
失敗しない排水性の高い容器の作り方
挿し木をする容器は根の成長と水分の状態が分かりやすいので透明なプラカップがお勧めです。
挿し木用のプラカップなどが特別に売っているわけではないので、100円ショップなどで購入し加工するのが一般的な方法になります。
加工といっても大掛かりなことをするわけではありません。プラカップのままでは余分な水が流れていかないので、排水用の穴などを開けるだけで完成します。
この時に注意したいのが、使う用土がこぼれない範囲でなるべく大きく穴を開けることです。この穴が詰まってしまうと余分な水を上手く排出することができません。そのため底面だけではなく横にも穴を開けるなど、なるべく水がたまらないように工夫することが必要です。
排水穴3つでは排水力不足でした!!(この記事で2回目)
簡単に排水能力を上げるためには、穴が空いた部分にハサミやカッターなどを使って細いスリットを作るのが簡単でオススメです。縦に切り込みを入れることによって溜まった水を効率よく排出することができるので、プランターとして売られているスリット鉢を参考にすると失敗がなくて良いでしょう。
一応、見本として私が使ったスリットの入った鉢を載せておきます。
斜めにスリットが入っている商品ですが、水が抜ければなんでも大丈夫なので真っ直ぐでも問題ありません。
カップの大きさに関しては使用する挿し穂よりも最低でも2〜3cmほど深いものを使うと根腐れしにくくなって良いと思います。
これで容器については終わりです。基本的には余裕のある大きさで排水溝を多めに作ることを意識すれば大丈夫だと思います。
これで容器と挿し穂の空いている部分に用土を充填すると挿し木が完成します。今回は挿し穂の作り方と容器についてまとめたので、次はどんな用土を使って挿し木をすればいいのかを解説していきたいと思います。
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