この記事ではイチジクの挿し木でなるべく失敗しないための情報として「穂木の入手方法と挿し木の準備について」をまとめています。
どこでいつ入手できるのか、どんな品種を選ぶのがいいのかを紹介した後に、挿し木直前の準備方法を解説します。
自分でやってみて後悔したことや、やってみて良かったことを各タイミングごとにリストアップしてみました。
穂木の入手方法に関して
イチジクの挿し木には挿すための枝(穂木/挿し穂)が必要になってきます。一般的に普通の園芸店やホームセンターなどで苗の流通はあるのですが、穂木は販売はされていません。
調達する伝手がない場合はヤフオクやフリマサイト等で購入するのが一般的な方法です。
園芸店 ホームセンター | ネットショップ | ヤフオクなど | |
苗 | 〇 | 〇 | 〇 |
穂木 | × | × | 〇 |
品種数 | 少ない | 多い | 非常に多い |
値段 | 割安 | 普通(+送料) | 割高(+送料) |
品質 | 安定 | 安定 | 出品者や季節などで バラツキが多い |
イチジクの品種について
イチジクを栽培するにあたって重要なものが「どんな品種を育てるのか」ということです。
イチジクには多くの品種がありそれぞれ異なった性質を持つことが多いので、複数の品種を育てるとその違いを楽しむことができます。
品種が多いことによって様々な風味を持つ実がなるのがイチジクの魅力ですが、これからイチジク栽培を始める人にとってはこれが逆効果になってしまうことがあります。
何を選べばいいか迷っちゃうよね…
前述の表では園芸店やホームセンターで販売されている品種は「少」と記載しましたが、近所の4店舗だけでも以下の11品種の取り扱いを確認しています。
- 桝井ドーフィン
- ビオレソリエス
- 蓬莱柿
- ホワイトイスキア
- ホワイトゼノア
- セレスト
- ロングドゥート
- アーチペル
- サルタン
- パスティリエ
- コナドリア
- ブリジャソッドグリース
これだけでも選択肢が十分にあるのに、ネットショップではさらに倍以上の品揃えがあります。ヤフオクなどでは通常で回らない海外の品種もあるので、それを数えてみると100品種を超える状態でした。
100種類から選ぶなんてとても無理だ…
中には実の色や大きさなど似た特徴を持つ品種もありますが、似ている中でも差異が多く何を選んで良いのか分からない状態になってしまいます。
私もいろいろな品種を育てたいと思いいくつも穂木を購入して育てています。
イチジク沼にどっぷりと浸かってしまいました
いろいろ経験したり調べてわかったこととして、これだけは言えるのが
値段が高い品種 ≠ 優れた品種
ということです。高ければそれだけ良い品種というわけではありません。海外産などの珍しい品種であることは間違い無いと思いますが、日本の気候に適した品種かどうかで上手く育つか、美味しい実をつけてくれるかは分かりません。
また、同時に
新しい品種 ≠ 優れた品種
ということも言えます。当然新しい品種は今までの品種にはない形質を持っていないと「〇〇でいいじゃん」といわれて品種登録されることは少ないので、何かしらの利点はありますが、過去の品種に対して全ての面で優れているわけではありません。
日本ではトップの流通量を誇る桝井ドーフィンは明治時代に導入された品種で、少なくとも100年以上の歴史を持つ古い品種ですが、日本ではいまだに独占状態で活躍している優秀な品種です。
イチジクには品種によって葉の形、実の色、実の大きさ、風味、目の大きさ、酸味の有無、着果しやすさ、収穫時期、耐寒性、樹勢など少なくとも10個の要素の違いがあります。
自分好みの品種を見つけるのもイチジク栽培の醍醐味の1つと言えるでしょう。
どの品種にも良さがあるので、値段などに惑わされずに「推し品種」を探してみましょう
同じ品種の名前違いに注意
イチジクの品種は非常に多いので様々な名前を聞きますが、中には同じ品種であるにもかかわらず複数の名前を持っているものもあります。そのため自分が購入しようとしている品種の別名などを事前に確認しておいた方が品種が被らなくて済むので良いでしょう。
具体的な例を1つ挙げると、
他にも名前が違う品種がいくつかあるので、その品種の特徴と照らし合わせて調べてみるといいと思います。
あなたの推しはなんですか?
「何に期待してイチジクを栽培するのか」というところは非常に大きなポイントになってきます。
人によって重視するものが違ってますが、
- とにかく大きな実を食べたい
- 早い時期から食べたい
- 珍しい品種を育てたい
- 観葉植物として育てたい
など様々な理由が考えられます。
私の場合は「珍しい品種」と「色んな種類を食べ比べたい」の2つです。
本やネット記事、動画などを見まくって惹かれる品種を探してみた結果、私の推しが決まりました。
推し品種は『Green Greek』と『Blanche d’Argenteuil』です!
実はこのアイコンは『Green Greek』の葉っぱだよ
まず『Green Greek』は実の色で一目惚れしてしまった品種です。イチジクといえば桝井ドーフィンや蓬莱柿の赤っぽい色味をイメージとして持っていたのですが、完熟しても濃い緑色のままで、中は鮮やかな赤色で今までのイメージを裏切るような見た目に引き寄せられていました。
調べてみると中果で味も良く、やや晩成なのがネックですが耐寒性も強いようなので住んでいる地域の気候には合っていたのですぐにネットで苗を購入しました。
『Blanche d’Argenteuil』は黄色果種で気になったのと、着果しやすさが特徴で名前もカッコいいので欲しかったのですが、苗は2万円を超える値段で取引されていたので、穂木しか入手することができませんでした。合計で4本買ったのですが4本とも失敗してしまいました。
『Blanche d’Argenteuil』には振られ続けています。よよよ…
現在は11品種の株を保有していますが、なるべく性質が偏らないように注意して集めました。
品種名 | 果皮 | 実の大きさ | 目の大きさ | 収穫時期 | 備考 |
White Ischia | 黄 | 小 | 小 | 早 | 最初に見つけた品種 |
ビオレソリエス | 黒 | 中 | 小 | 晩 | 有名な「幻の黒イチジク」だから |
Celest | 赤 | 小 | 閉 | 早 | 苗が安く、赤いのが育てたくて |
桝井ドーフィン | 赤 | 大 | 開 | 中 | 定番を抑えておきたくて |
Longue d’Aout | 黄 | 中〜大 | 閉 | 中 | 大粒の黄色果種が食べたくて |
Green Greek | 緑 | 中 | 小 | 晩 | 推し品種。やっと手に入った |
LSU Tiger | 赤(縞) | 小〜中 | 開 | 普 | 珍しいのが欲しくて |
Dalmatie | 緑 | 中〜大 | 開 | 中 | 緑で大きい実をつけるので |
Mary Lane | 黄 | 中 | 閉 | 晩 | ゼリーのような食感が気になって |
Col De Dame Noir | 黒 | 中 | 小 | 晩 | レディシリーズの1つを試したくて |
Beer’s Black | 黒 | 小〜中 | 小 | 早 | 早生の黒果種が欲しくて |
買った順にまとめるとこんな様子になっています。収穫期などは調べてみた情報を総合した情報なので、現在の栽培環境で実際にこうなるのかは不明です。
今保有している品種を収穫期ごとに並べてみるとこんな形になります。
果皮 | 早生 | 普通 | 晩成 |
赤 | Celest(小) | LSU Tiger(小〜中) 桝井ドーフィン(大) | ー |
黄 | White Ischia(小) | Longue d’Aout(中〜大) | Mary Lane(中) |
緑 | ー | Dalmatie(中〜大) | Green Greek(中) |
黒 | Beer’s Black(小〜中) | ー | ビオレソリエス(中) Col De Dame Noir(中) |
少し意識しながら集めたので、良いバランスで分布していると思います。
早生品種では小果の品種が多いので、やはり早生黄色果種の『Blanche d’Argenteuil』が欲しいところです。
意識していなかったけど、早生の『Blanche d’Argenteuil』で始まり、晩生の『Green Greek』で締めるのは良いバランスだし、推し品種2つは理に適った組み合わせな気がする…。
推し品種を冷静に考えてみることも必要…?
自分の推し品種として『Blanche d’Argenteuil』の話をしていますが、冷静になって一歩引いて考えると見え方が変わってくるかもしれません。
前述の通り、イチジクには数えきれないほどの品種があります。何十種類も育てたり食べ比べたりしたわけではないので情報としての比較ですが、似ている品種も当然たくさんあります。
値段が高騰している品種が欲しい場合は、どうしてその品種が欲しいのかを冷静に分析することで思い込みを取り除いたり、より自分の栽培環境にあった品種が見つかったりするかもしれません。
実際に私の例で考えてみましょう
『Blanche d’Argenteuil』の特徴は樹勢が弱く、豊産性で早生の黄色果種です。味に関しては酸味が無く甘さが際立つ品種のようです。
最大のウリは「豊産性かつ早生」というところでしょう。それぞれの要素についての解説と代替案をまとめてみます。
性質 | 解説 | 代替案 |
果皮 | 黄色で主に流通している品種とは違う色 擦れなどで色変わりが目立ちやすい欠点もある | 黄色果種全般 |
実の大きさ | 中果(60g程度)なので大きすぎず小さすぎず | 小果以外が候補になるが中果だと 『Mary Lane』や『LSU Gold』など |
豊産性 | かなり若い株でも収穫できる上に鈴なり | 『White Ischia』や『LSU Gold』など |
収穫時期 | 秋果としては早い8月頭ごろから収穫できる。 | 『White Ischia』 |
樹勢 | 樹勢が弱いので実がつきやすい 反面として木が太りにくく、挿し木が難しい | 樹勢は豊産性との関連があるので省略 |
味 | 酸味がなく糖度が高い品種(シュガー・ハニー系) | 直接的な比較ができていないので案なし |
このように比較すると、
絶対に『Blanche d’Argenteuil』が食べたい!!
という場合でなければ『Mary Lane』や『LSU Gold』が候補として最適であると思います。
2品種とも普通には流通していない品種なので手に入れるのは少し大変ですが、そもそも『Blanche d’Argenteuil』が大変珍しいものなのでそれに比べれば入手難易度は低いでしょう。
値段的にも『Mary Lane』と『LSU Gold』を2本買ってもお釣りが来るレベルです。
流通品種なら『Longue d’Aout』とか『Archipel』あたり?
コレクター魂や執念的にはNGですが、こうやって冷静に判断すると条件的には他にも代替の品種がある気がしてきます。
また、偽物や勘違いの結果として品種違いが100%発生しないとも言い切れませんので、そこにも中が必要です。
「すっぱいぶどう」の話のように自分をごまかしているだけな気もしますが、一度冷静になってみると改めて品種の性質を見直すことができて良いと思います。
まとめ:推し品種を軸にベストな組み合わせを考えましょう
まずイチジクを育てたい人は気になっている「推し品種」を探してみましょう。
見つかったか、もう決まっている人はその品種を軸に他の品種も探してみるとイチジク栽培をより楽しめるのでオススメです。
果皮の色が異なる品種を育てて違いを楽しんだり、収穫時期をずらして長い期間楽しんだり、逆に同じ時期に収穫期をまとめて比較したりと様々な楽しみ方があると思います。
品種選びは選択肢が多く大変ですが、その分これからの楽しみが増える側面もあります。
買ってから「なんか違った…」というのも悲しいので、来年のイチジクのシーズンに向けて色々な面から品種について考えてみる良い機会なのではないでしょうか。
自分が納得できる方法や手段で気に入ったものを購入するのがストレスを抱えずにイチジク栽培を楽しめる方法だと思います。
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