イチジク栽培をしてきて、たくさんの失敗や分かったことがあります。
自分が挿し木をする前に知っておきたかったことを10個ピックアップしてまとめてみました。
イチジクの挿し木において、どんな問題に対してどんな対応をしたかをメモした記事です。
専門家としての知見は一切ありません、経験の蓄積のためです。
記事の内容を活用する場合は自己責任でお願いします。ご注意ください。
随時加筆していきます。
細い穂木でも挿木は成功するのか
大丈夫です。細い穂木でも長さを確保すれば成功しました!
これがその時の画像です。穂木の太さは6mmでかなり細めですが発芽も発根もすることができました。
普通は2〜3節の穂木を挿木するようですが、多め(長め)に埋めることで成功率が上がります。
細い穂木の時は、なるべく多め・長めを心がけて挿し木をするようにしましょう。
どのくらいの長さを挿せば良いのか
イチジクは1節から挿し木を行うことができますが、あまり成功率は高くありません。
品種によって発芽のしやすさや発根のしやすさは異なりますが、一概には言えませんが最低でも2〜3節で挿し木をするのが一般的のようです。
最近人気沸騰中の『Schar Amber』や『Blanche d’Argenteuil』などの挿し木が難しいと言われている樹勢の弱い品種は長い穂木を使うことで成功率が上がるようです。
長さは20cmほどで挿木をしたところ『Schar Amber』に関しては非常に状態の良い根がたくさん出てきました。
4〜5節の穂木は分けるより、そのまま挿木した方が早く大きくなるのでオススメです
基本的には節の数が多ければ多いほど挿し木の成功率が上がってきます。また、穂木の長さも長ければ長いほど蓄えられた栄養素が多いので発根や発芽まで時間がかかっても枯れにくくなります。
これは節の数が増えれば発根する可能性のある部位が増えるのと、穂木が長ければ発根・展葉するまでに時間がかかっても栄養素切れで枯れる可能性が減るからです。
節の数が多い ➡︎ 発根の可能性アップ!
穂木が長い ➡︎ 長期戦でも枯れない可能性アップ!
品種によって発根や展葉するまでの期間や難易度が異なるので、なるべく栄養素を多く保った状態で挿木をするのが望ましいということになります。
穂木の芽(実)を取り除いた方がいいのかどうか
芽が多すぎると万が一に同時に発芽した場合に栄養が分散したり、栄養切れで枯れたりする可能性はゼロではないので上部の1〜2つの芽を残して切除するのが良さそうです。
イチジク的には枯れたくはないので上手く調整はするはずですが、後悔したくないので一応取り除いています。
実に関しては、大きくなっても自然に落果するので放置しても問題ないとする人もいるようです。
穂木の芽を栄養節約のために取り除いたのなら、実の方も切除してしまった方が無難です。
最初のうちは芽なのか実なのかの判別が難しいので、実が大きくなってきた段階でちゃんと消毒などをしたカッターなどで穂木を動かさないように切り取るといいでしょう。
挿し木の向きについて
植物の地上部は重力に逆らって上に向かって成長する性質があるので、芽が上向きになるように植えるのが基本です。
そうすることで無駄なく真っ直ぐに成長することができるので成長効率もよくなりますし、何より見栄えが良くなる上に摘芯などの管理がしやすくなります。
もし複数の芽を残す場合は一番上の芽が上向きになるように植えるのがオススメです。
これは植物の「頂芽優勢」という性質により、一番先端部分の芽が成長しやすいからです。
まず最初に大きくなる芽が将来的に樹のメインの枝になっていくはずです。このメインの枝を綺麗にまっすぐ伸ばすように挿し木を行うのが良いでしょう。
変な向きで挿し木をしてしまった実際の写真を載せてみます。
これは芽を2つ残したので両方とも斜め上に向かって成長させるように目指しましたが、土を入れる時に少し回転してしまったようです。
運悪く真下の向きに…。気付いたのは発根してからでした
両方いい感じにしようとして完全に裏目に出てしました。頂芽が下向きなので栽培環境が最初から物理的に逆境です。
大変だけど重力に逆らって芽を伸ばすぞ!
こんな風に余裕のない穂木に無駄な労力をかけてしまいました。
ごめんよ…
どんな容器に挿し木をすれば良いのか
穂木の量が多ければ育苗箱に寝かせて、上から鹿沼土などをかけるのですが、大量に穂木がない場合は、根の成長度合が分かりやすいプラカップに植えるのがオススメです。
育苗でよく使うポリポットを使った方が鉢上げをするときはやりやすいですが、鉢底石やネットなどを敷かないと用土が流れ出ていってしまうなどのトラブルが発生するので、挿し木するまでに少し手間と材料が必要になります。
そのため、100円ショップなどで売っているプラカップの底に錐などで穴を開けて使いましょう。
穴を開けるときは底面に等間隔になるように意識しましょう。そして穴一箇所ごとにハサミを使って5mmくらいの切れ込みを入れておくと排水性能が上がって良いと思います。
これでカップの底に用土の粉末が溜まりにくくなって排水性を確保できます!
プラカップにもデメリットがあり、大きくなってきて植え替えをするときに根がプラカップから剥がれにくいことがあるので慎重に植え替え作業を行う必要があります。
もし挿し木に慣れてきて根の状況を細かく見る必要がない場合は、ジフィーポットを使うのがおススメです。
これを使えば苗をプラカップなどから取り出す際に、根が切れたり用土などが崩れたりせずにスムーズに、効率よく行うことができるはずです。
引越しのダメージが減るのはすごくありがたい!
容器はどのぐらいの大きさにすればいいのか
最終的に鉢上げを行うので大きい容器を使う必要はありません。
過湿を防ぐために、どちらかと言えば小さめの容器を使った方が良いと考えられます。
大きさよりは深さの方が重要で、自分が挿し木をしたい穂木を埋めたい高さに応じて容器を選ぶのが失敗が少なくて良いのかもしれません。
私は100円ショップで売っている400mL程度のプラカップを使っています。
カップの底に凹凸がついてる商品の方が、穴を開ける時に凹みにくくて使いやすいです。
その時に手元にあった穂木が比較的長いものが多かったので大きめのカップを使っていますが、太く短い穂木なら300mL位の小さいプラカップを使っていると思います。
穂木に合わせてサイズを変えてあげてください!
長さのある穂木を使う場合は、穂木の一番下の部分はなるべくプラカップの底から離れていた方が水切れが早くて良いです。
上の画像のように、カップの上部では水がすぐに下に抜けていきますが、底の方は水がかなり溜まりやすくなってしまいます。
ある程度の水分は重さで勝手に抜けていきますが、完全には排水されないことが多いです。
ラーメンの湯切りのように振れば水を抜くことは出来ますが、大変ですし完璧ではありません。湿度が高い部分に穂木の下部があるとそこで腐ってしまうことがあります。
水の溜まりやすい部分に穂木が来ないように、ギリギリの大きさのカップは避け、余裕のあるカップを使うようにしましょう。
どんな用土に入れれば良いのか
まず意識したいのは水捌けの良さです。最初の頃は根がないので、溜まった水に使っているとそこからカビが繁殖してしまい腐る可能性があります。
それを回避するために「水を吸収するけど余った水は流れる」ような用土を選びましょう。王道で言うと鹿沼土か赤玉土です。粒の大きさは細粒か小粒を選びましょう。
私は鹿沼土の細粒を使っています。簡単に赤玉土よりも良いと思った理由をまとめると、
- 粒が硬いので割れにくい(割れて砂みたいになると水捌けが悪くなります)
- pHが低いのでカビなどの繁殖を抑制できる
- 水分によって色が変わるので水分量が見てわかりやすい(乾燥すると白っぽくなる)
以上の3点になります。色々な挿し木の用土についてはこちらにまとめてあります。
どうせ最終的には培養土に植えるからといって、最初から培養土に植えたら水捌けが悪く根腐れして枯らしてしまいました(経験談)
「急いては事を仕損じる」ということでしょうか。2段階で土を変えるのが良さそうです。
水やりの頻度はどのくらいが適切なのか
発根前と発根後で水を与える頻度が変わります。
最も気をつけないといけないのが発根前ですが、2〜3日くらいの頻度で水やりを行いました。
与える時はカップ(ポット)の中の水分と空気を全て入れ替えたいのでたっぷりと与えます。
同時に繁殖しかけているカビなどがいたらそれを洗い流したいので、乾いた分を補充するような水やりはあまり適切ではないと考えています。
検証した結果、5日放置しても水分量は80%も残っているので水分補給というよりは、カップ(ポット)内の環境をリセットするのが主な目的です。
それを検証した実験がこちらです。
そのため継ぎ足し継ぎ足しで給水するのではなく、思い切って水をかけてしまうのが良さそうです。
ある程度発根が進んでくると、今度は根をよく張らせるために水やりの頻度を落としていきます。
根の周りの水分がなくなれば根を伸ばして水を吸おうとするので、カップ全体の水分量を意識していくことになります。
4日〜7日ごとに灌水を行うと良いと考えています。
あまり過保護になりすぎると根を伸ばさなくて良くなってしまうので、最初に比べると放任気味に育てるのがコツです。
育苗用ヒーターを使った方がいいの?
挿し木の適温は20℃前後と言われているようです。
実際に15℃と22℃程度の室温で同じ『Shcar Amber』の穂木を挿し木しましたが、22℃の部屋で管理していた方が早く発根しました。
室温が夜間も含めて常に20℃あればヒーターは不要だと思いますが、寒い秋から冬に挿し木をする場合は必須になってくると思います。
その後、夜間はかなり冷え込んできたのでベストセラー1位のヒーターマットを導入してみると成長していなかった『Shcar Amber』もスクスクと根が伸びてきたので買って良かったと思っています。
また、夜中に冷え込むのであればタイマーを使うかサーモスタットを使って温度調整をすることで効率よく育苗を行うことができます。
私はタイマーは昼間だけLEDを点灯するために使っています。
アナログで使いやすいですが、済んでいる地域の電流が50Hz(ヘルツ)か60Hzかで裏側にあるレバーの切り替えが必要なので注意してください。
ヘルツ設定を間違えて1.2倍くらい早く進む状態で2日間くらい使ってました(笑)
時間でオンオフを設定すると、もし天気が悪くて昼間が寒かった時に加温できなくなってしまうのでサーモスタットを使うと温度が上がりすぎず、常に保温しながら育苗ができるのでオススメです。
これで24時間電源つけっぱなしでも、設定した温度より高くなることはなくて安心です。もし細かい調整が面倒であれば、これらのアイテムを用意しておくだけで世話の手間が激減するはずです。
枯れる兆候はどんな様子?
何本も枯らした経験から、枯れている穂木は全て「芽の下の幹までシワシワになっている」状態になっていました。
この状態は地下部分で何らかの異常が発生し枯れていっている状態です。土の中はカビたり腐ったりしていました。水捌けが悪く、水分が多すぎたのが原因と考えられます。
もし上部が色が変わって萎んできても発芽や展葉が進んでいたり、芽の上で止まっている場合は問題ありません。
枯れている訳ではなく、成長点がないのでその部位の栄養を移動させただけと考えられます。実際に育っている樹を摘芯しても脇芽が成長するに従って切断部分は萎れていきます。
上の画像は実際に育っている『Green Greek』です。芽の上だけ萎んだのであれば、いずれこのように成長していくことになります。
芽や葉が枯れていなければイチジクが狙ってやっていることなので心配しなくても大丈夫ということです。
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