【イチジク】鉢と水捌けを制する者は栽培を制す‼︎【鉢選びと使い方】

イチジク

イチジクの挿し木が大きくなってきたら、いよいよ植え替えが必要になってきます。植え替えをする時には、次の3つの重要なポイントを押さえておく必要があります。

  • 鉢の形状(サークリングしないかどうか)
  • 鉢の大きさ(中に入る土の量について)
  • 水捌けを良くする方法について(用土の入れ方)

イチジクは果樹という分類で、将来的には大きな木になる植物です。小さく育てる方法もありますが、果実を収穫して味わうためにはある程度の大きさに育てる必要があります。

路地に植えている場合ではあまり気にする必要はありませんが、鉢植えであれば「どんな鉢を選べば良いのか」という大きな問題に直面します。

この記事では、鉢の選び方について大きさと形状の2つの観点から紹介していきます。

そして最後に水捌けを良くするためにどんな順番で鉢に用土を入れれば良いのかを解説していきます。

この記事で自分にあった鉢を探してみましょう!

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サークリングしない形状の鉢を使うのがオススメ!

鉢には様々な材質や形状のものがありますが、樹齢が若いイチジクの栽培でよく使われているものはスリットがあるタイプの物が多く使われています。

これは植物が育つ際に発生する「サークリング」という現象を防ぐのに効果があるためです。

イチジクではありませんがサークリングの例としてヒヤシンスの水耕栽培の画像を載せてみます。

サークリングのイメージ

上から根が伸びてきて、底にはグルグルと回転するように根が集まってきています。この時に注目してほしいのは容器の中心部には根がほとんど存在していない空洞があるということです。

このサークリングが発生すると底の部分にだけ根が集まってしまい、容器の中央部分には根があまりない状態になってしまいます。

そうなるとせっかく根が伸ばせる場所がまだあるにも関わらず、その部分を使わずに植物は成長することになるので、非常に効率の悪い状態になります。

せっかく場所を用意してくれているなら、なるべく広く使いたいよね…

そうなると鉢の大きさの割に小さなイチジクが育ったり、体を上手く支えられずにグラグラと動いてしまったりと良いことはありません。

そんなサークリングを防ぐための構造が「スリット」です。根は下に向かって伸び、スリットに到達すると、根は空気と触れて先端部分が乾燥して成長を止めます。これによって、次の根が別の方向から伸びて鉢の中で満遍なく根が行き届くようになります。

鉢全体を効率よく使うための工夫がスリット鉢の特徴になっています

特にこだわりがなければスリットタイプの鉢を使うのが無難です。

イチジク栽培で有名な方もロングタイプのスリット鉢を使っているね

手元にあるスリットが無いタイプの鉢しかない場合などは改造することでスリットタイプに無理やりすることが可能です。改造の方法はこの記事の最後にまとめてみました。

鉢は大きければ良いってものではない…!?

スリット鉢の能力を確認したところで、次は鉢の大きさについての話になります。

鉢は大きいほど土が入るから、大きく育てたいなら大きな鉢一択だよね!

と勉強をする前までは思っていました…

最終的には大きい鉢ほど土がたくさん入るので、大きく育てることが可能なのですが、いきなり大きい鉢に植えてしまうと思うように成長してくれない場合があります。

理由に関しては前に話したサークリングと同じ理屈です。

大きな鉢にいきなり植えてしまうと、根をどんどんと伸ばせるので鉢の外側にばかり根が増えていくことになります。

外側だけに根が回っていくってことは…?

最初から大きな鉢に植えるとスリットの有無に関わらずサークリングをしてしまったのと同じような状態になってしまいます。鉢の中心部分の根量が少なくなり、鉢の容量を十分に活かすことができなくなってしまいます。

これが成長に応じて鉢増しをしていく理由です

せっかくの大きさが無駄になっちゃうのは勿体無いね

最初は4〜5号鉢に植えて、大きくなったら6〜7号鉢、さらに大きくなったら8〜10号鉢のように段階的に大きくしていくと効率良く鉢を使うことができます。

鉢増しは2〜3号ずつ大きくするのが一般的のようです

ではサイズごとの容量とコスパについてまとめていきます。

鉢の容量とコスパを一覧表で解説!

よく使われるロングタイプのスリット鉢の体積と、幾つかのホームセンターを回った最安値から土の容量1Lあたりの値段とコスパをいくつかの鉢と比較していきます。

今回比較する鉢は次の3つです。

3種の鉢の一覧
左から4号鉢(1.3L)、5号鉢(1L)、140型(約1.4L)

このロングタイプのスリット鉢、根はり鉢、BNポットの比較を行います。スリット鉢の体積を基準として、なるべく似た容量の大きさの鉢をピックアップしています。

スリット鉢
4号
スリット鉢
5号
スリット鉢
6号
スリット鉢
7号
スリット鉢
8号
体積
(土の容量)
1.3L1.9L3.5L5.1L8.6L
最安値
(2023年1月段階)
118円148円248円348円598円
1Lあたりの値段90.877.970.968.269.5
コスパ×
根はり鉢
5号
根はり鉢
6号
根はり鉢
7号
根はり鉢
8号
根はり鉢
10号
体積
(土の容量)
1.0L1.8L3.0L4.8L9.6L
最安値
(2023年1月段階)
148円198円248円348円598円
1Lあたりの値段14811082.772.562.3
コスパ✖︎×
BNポット100
(3号相当)
BNポット120
(4号)
BNポット140
(5号相当)
体積
(土の容量)
約0.4L約0.7L約1.4L
最安値
(2023年1月段階)
19.5円27.2円38.2円
1Lあたりの値段48.838.927.3
コスパ
BNポットの一覧表 ※セット販売のため、値段は一個あたりのもの

号数は鉢の直径で決まっていて、「号数 × 3 」が直径になっています。

同じ号数でも底面の直径が異なると体積が変わってきます。横から見た時に四角系のスリット鉢と逆三角形のような根はり鉢では体積がかなり変わってきます。

ただ、前に書いた通りですが、鉢は大きければ良いというわけではありません。

それぞれの鉢に特徴がありますので、それもまとめてみます。

スリット鉢根はり鉢BNポット
特徴底面から垂直のスリット斜めのスリットで、底面が細いセット販売の底面穴のポット
メリットクセがなく使いやすい
風で倒れにくい
水捌けが良く根腐れしにくい
スリットが細く用土が溢れない
サークリング防止効果が高い
受け皿が小さくても使える
プラスチックが厚く丈夫
抜群のコスパ
ポリポットより硬いの扱いやすい
デメリットスリットがやや太い
ネット販売だと高い
風などで倒れやすい
号数の割に容量が小さい
栽培面積の効率が悪い
選択肢が少なく大容量がない
サークリングする可能性あり

圧倒的な使いやすさ!オールラウンダーなスリット鉢

スリット鉢のメリット・デメリット

スリット鉢はよく使われているだけあって、これといった難点がないのが特徴です。

押さえるべき所をしっかりと押さえた万能選手!

名前の通りスリットがしっかりと入っているのでサークリング防止効果もあり、サイズ展開も豊富で土の容量も段階的に大きくなので、鉢増しをする際にも号数だけを指標にすれば良いので分かりやすいです。

鉢の形状的にも植え替えがしやすいので、初心者から上級者まで使いやすい鉢と言えるでしょう。

悪い点と言っても、あえて挙げるとすればという程度のものですが、スリットが少し太いので細かい用土を使った場合は流出する可能性があるという所が注意点です。鉢底石や大粒の用土を下に敷けば全く問題になりません。

もう一つの点は、amazonなどのネット販売では安く売っている場面が少なく、かなり割高な商品が多いという点です。そのためスリット鉢を安く手に入れるならホームセンターで購入するのが一般的になります。

そうなると、近所の店舗の取り扱い次第では、すぐに手に入らない可能性があるので急ぐ場合は注意が必要です。定価でホームセンターのネットショップでも買えますが、送料が余計にかかったり、発送に時間がかかったりする可能性もあります。

急に「植え替えしなきゃ!」って事は少ないから、ほぼ問題にはならないね

使い方によっては唯一無二の存在!?玄人向けの根はり鉢

根はり鉢のメリット・デメリット

スタンダードなスリット鉢の次は、独特な形状をした根はり鉢です。

私が使っていて感じたことですが、最多のメリットとデメリット数を誇ります。ものすごく光る所もあれば、今一つな所もあるという、使う人を選ぶ鉢だと言えるでしょう。

使う人の目的次第で評価がガラリと変わる鉢だと思います

鉢の表面がマットな加工になっているから高級感もあるよね

この鉢の最大の特徴は逆三角形のような形状ということに尽きます。これによってメリットとデメリットのほとんどが発生しています。

この形状を上手く使える人は高く評価して、そうでない人は悪い評価になるでしょう。

では、鉢底が小さいことによって発生するメリットの方を先に解説していきます。

最も水が溜まりやすい底面部分の用土量が少ないので根腐れを起こしにくいことになっています。また斜めに切られたスリットが鉢底に向かって集まってくる構造になるので、根の先端を効率よく外気と触れさせることが可能です。

空気に触れれば触れるほど根の分岐を促すことが可能になるので、根の健全な成長を促す能力が高い鉢と言えるでしょう。

これが「根はり」という名前を冠している所以ですね

また、受け皿が小さくても使えることに加えて、底面からの自動灌水を考えている場合にはこの鉢は非常に便利かもしれません。

植物栽培では大型の雨樋のような容器と組み合わせることで、水を入れておくだけで効率よく灌水を行うことが可能です。これだけだとどんな鉢でもできるのですが、根はり鉢の場合は底面が小さいので比較的コンパクトな容器でも底面からの自動灌水を行うことができます

スリット鉢では入手困難な大型の工場用雨樋が必要ですが、根はり鉢なら塩ビ管でいけそうです

これらのどこかに魅力を感じる場合は、根張り鉢を効果的に使うことが可能かもしれません。次にデメリットの方もまとめていきましょう。

鉢の底面が小さいことによって、鉢全体の重心が高くなってしまうというのがかなり重大な弱点です。植えた植物が大きくなるとさらに重心が上にずれて強い風が吹くと倒れてしまう可能性が高いです。

イチジクは一気に大きくなるから、外だと支えがないと心配だね…

また、他の鉢と土の容量を比べると、同じ号数だとしても入る土が少なくなっています。

同じ号数のスリット鉢と比べると約40〜50%位少なく、同じ体積にしたい場合はスリット鉢よりも1号大きいものを選ぶことになります。

それに伴って、鉢の大きさの割に土が少ないので限られた面積を効率良く使って育てたい場合は不向きな鉢ということになります。

コスパ的には変わりませんが、栽培面積としての効率は悪いです

面積効率を求めるなら寸胴みたいな鉢の方が良いってことだね

はっきりと長短が決まっているので「逆三角形の方が都合が良い!」と言える人はうまく使いこなせると思います。

要チェック

10号の根はり鉢はどこのホームセンターでも大体600円ほどで販売されていますが、たまにAmazonではかなりお得な値段で販売されていることがあります。今回は1Lあたりは46.3円と他の鉢と比べてもかなりお手頃です。

安くなった日の根はり鉢の画像
安くなった日の根はり鉢

緑/青/白の三色展開ですが、緑と青は1144円ですが、白だけは444円(22023/2/13)でした。
2023/2/20では447円になっていました(3円上がった…)

色を気にしないならメッチャお得だね!

定期的に安くなることがあるので、気になる人は狙ってみてはいかがでしょうか。以下にリンクを貼っておきます。

コスパ抜群!たくさんの育苗をするならBNポット

BNポットのメリットとデメリット

最後にBNポットの紹介です。

このポットは3つの中ではスリットが入っていない鉢ですが、なんと言っても最大のウリはコスパが非常に良いということです。

大きいサイズが通常の流通ではないのが欠点ですが、2L以下の鉢で手頃なものを探しているのであれば、スリット鉢や根はり鉢よりも1/4程度の値段で購入できるので最適かもしれません。

「セット販売で安い」といえば野菜の育苗などで使われているプラポットをイメージしがちです。プラポットであればさらに安く購入できますが、薄く柔らかいプラスチックでできているので持ちにくかったり、安っぽく見えてしまうなどの難点があります。

「ポリポットは流石に簡素すぎるから、もう少しリッチな雰囲気で育てたい…」という人にオススメです

サークリングを気にするのであればハンダゴテを使って加工するのも良いですが、他の2つの鉢に比べると薄い素材なので、カッターやハサミなどで底面に空いている穴に切れ込みを追加するだけでも変わってきます。

他の鉢は小さいサイズだとコスパが悪いから、4〜5号を買うつもりなら全然アリだね!

水捌けを良くすれば、根の成長にも効果あり!

最後に、鉢の水捌けを意識することがイチジク栽培の成功の鍵になってきます。

水を制する者は栽培を制す‼︎

ぴくっ‼︎

水捌けが良いということは鉢の中に水が溜まりにくくなるということです。この結果として腐敗菌などの繁殖の場である滞留した水を抑えることができるので、根腐れを防止する効果があります

また、水切れが早くなるので潅水の手間は増えてしまいますが、根が水を求めることで盛んに成長し強く立派な株に育てることが可能になります。

たくさんのスリットや穴が空いている鉢では水捌けがよくなりやすいですが、細かい用土を使うと表面張力などの力で水を思うように排出することができません。

鉢の持っている排水能力を活かすには、使う用土を工夫をするのが良いでしょう。

下の写真のように植え付けると水捌けが良い環境になります。

底に穴とスリットがある鉢では粒が細かい用土だと溢れやすい上に水捌けが悪くなるので、大玉の赤玉土を鉢底石代わりに敷いて、その上にブレンド用土を入れるという形にしています。

大玉の土だ‼︎水捌けに定評のある大玉の土を鉢底に‼︎

大粒の用土を入れることで、鉢の底に空間ができるので水が流れ落ちやすくなるのと、この位置まで根が伸びると根が空気と触れることになるので、過剰に根を伸ばすのを抑制し根の分岐を促します。

スリット効果+水捌けと空気層で根をぐんぐん成長させる構造です

せっかく鉢の要領や形にこだわったのであれば、その力を十分に発揮できるように用土の入れ方を工夫して植物に対して、準備段階でできる最後のアシストをしてあげましょう。

おまけ:鉢の魔改造について

ホームセンターで鉢を探してみると、セールで安くなっていたナーセリーポットを見つけました。

ナーセリーポットの改造
ナーセリーポット。よくある底に穴が空いた形状。

種類は3種類でそれぞれの体積と値段は次のとおりでした。

  • 190型…110円で体積2.7L(1Lあたり40.7円)
  • 230型…217円で体積6.0L(1Lあたり36.2円)
  • 265型…272円で体積8.5L(1Lあたり32.0円)

メジャーなロングタイプのスリット鉢の1Lあたりの値段が70円程度なのを考えると非常に安く、作り自体はしっかりしています。

ただ、問題なのがスリットがないという所ですが、

無いなら作れば良いじゃない( ̄+ー ̄)

ということで作りました。

ハンダゴテでスリットを増設

同時に買った色違いのポットですが、これと同じように加工しました。

加工はハンダゴテを使って、プラスチックを溶かすことで無理矢理スリット構造を追加しました。今回はスリット鉢と同じように45°ずつの合計8箇所にスリットを作ってみました。

これでサークリング防止+水捌け向上!

値段的にはスリット鉢の半額に迫るくらいのかなり良いコスパです。ぜひ安いポットを見つけたら簡単なのでやってみてはどうでしょうか。普通に買った鉢より愛着を持って使えるはずです。

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