【イチジク】『Excel』を育ててみて分かったこと〜安定性重視のバランスタイプ〜【品種紹介】

イチジク

2022年の秋にあった、とある有名ネットショップでの競争に負けてしまったので、同じ方が出品しているヤフオクでの入手によって仲間入りを果たした品種です。

この品種はイチジク研究で有名な、コンディット博士により品種改良されたもののようです。

名前だけでみると某表計算ソフトを連想しますが、Excelとは「秀でる」や「卓越した」という意味を持っています。

すごい博士がそんな大層な名前をつけるんだから、優秀な品種なんだろうね!

1シーズン育ててみておおよその傾向が掴めたのでまとめていきます!

育ててみての感想・特徴

★★★★☆:味(1年目のでもかなり美味しい)
★★★★☆:味の安定性(平均80点)
★★★★☆:樹高(スクスクと大きくなる)
★★★★☆:肥大性(枝がしっかりと太くなる)
★★★☆☆:豊産性(たくさん付くわけではないが、数個はつく)
★★★★★:1年生での収穫可能性(鉢の大きさに関わらず着果した)
★☆☆☆☆:分枝性(剪定しないと脇芽がかなり出にくいので大きく育つ)
目:完熟前に少し開くが、果肉が見えるわけではないの「部分的に開く」程度だと思う
皮:薄く強いのでグチャッとしにくい。食べても全く気にならないが綺麗に剥がせる
種:弱く気にならない

・黄色果種によくあるシュガースポットが出にくいので、見た目が悪くなりにくい
・熟度が低くても十分に甘く、花の粒感を楽しめる。完熟だとジャム状になる。
・皮が薄くそのまま食べても気にならないが、簡単に剥くことができる
・挿し木からの栽培期間が7ヶ月程で収穫まで辿り着ける
・節間が狭く、茎が短く、面積の大きい葉が付く特徴がある
・水切れによって葉が萎れると、すぐに落葉させることで株全体の枯死を避ける

20品種程育ててみた中で特徴的な性質が上記の5つになるので、これからそれぞれ解説していきます。

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特徴①:シュガースポットが出にくい果実がなる

バナナとかで有名だけど、シュガースポットって完熟で甘くなってる証なんだよね

日本でイチジクといえば、桝井ドーフィンか蓬莱柿のような果皮の色が濃い品種のイメージなので、白イチジクと呼ばれるような黄色果種は馴染みが薄く、傷んでいるように思われることもあるようです…

多くの黄色果種は完熟するに従って茶色い斑点のようなシュガースポットが発生することが多いのですが、この品種は完熟状態でもシュガースポットが発生しにくいようです。

このようにかなり熟度が高くなり、中心部がジャムのようになっても果皮の外観が損なわれることがありませんでした。

また、次のように実が熟してきて垂れ下がってきており、目の周囲が割れてしまったので収穫しました果実に関しては色々な角度から写真を撮ってみました。

十分に熟しており、非常に美味しい実が収穫できました。この断面の写真を撮影する前に約90°ずつ回転して果皮の写真を撮りました。

収穫に適した熟度なのに、かなり綺麗な状態でした!

加工用としてはあまり関係ありませんが、製菓用などでは果皮の状態が良いものを使うことが望ましいので、そういった用途でも需要が高くなる品種かもしれません。

まずは見た目のExcelさの紹介だったね

特徴②:低熟度でも甘く、熟度によって食感が大きく変わる

それぞれ熟度が異なる果実を載せましたが、左から順番に熟度が上がっています。

個人的には若取りの方が独特な食感とザクロのような爽やかな酸味があって、より好みな味でした

一番左の若い果実では、花1つ1つがしっかりとしていて滑らかな繊維感を堪能できました。次の写真は切り出して撮影したもので粒が立っているのが分かりやすいはずです。

完熟すると酸味が目立ちにくくなりますが、ジャムのようなジューシーな食感で、甘さとマイルドな酸味を感じるバランスの良い味になりました。

個人差がある話ですが、イチジクで喉が痛くなりやすい私でも『Excel』なら樹液が垂れる程度の若取りでもダメージを感じずに食べられました。個人的には味以外でもExcelさを感じました

特徴③:皮が薄く食べても気にならないけど、簡単に剥ける

『Excel』は皮が薄く、果肉と一緒に食べても皮が悪目立ちするようなことはありませんでした。

また、葉が擦れて傷がついているなど皮ごと食べることに抵抗がある場合でも、上の画像のように『Excel』は簡単に皮を剥くことができます。

楽しくなるくらいスルンと剥けます

皮ごと食べたい場合でも、果肉だけを食べたい場合でもニーズを満たせる品種でした。

ちなみに剥いた皮だけ食べても甘くて美味しくてExcelでした!

特徴④:挿し木からの栽培期間が7ヶ月程で収穫まで辿り着ける

こちらの画像のように3月1日に挿木を開始した株の1つから、9ヶ月で2つ収穫することができました。

『Excel』の挿し木経過について

30g程度で非常に美味しいものが収穫できたのでかなり満足です

成長も早く、一年目から酸味と甘みのバランスが良い品質の高い果実が生産できるのでかなり気に入っている品種になりました。

特徴⑤:節間が狭く、茎が短く、面積の大きい葉が付く特徴がある

他の品種に比べて、『Excel』は次の2つの写真のように「節感が狭い」のが1つ目の特徴的です。

このことから、大きく上に伸びすぎないので室内栽培やハウス栽培など、樹高をある程度抑えて育てたい場合に向いているかもしれません。

また、育てて1年目では実感しにく内容ですが、高さあたりの節数が多いので生産性も高くなると思います。営利栽培でも生産性の面で優秀な成績を出せる気がします。

2つ目の特徴としては、「茎が短く、面積の大きい葉が付く」ということです。

上の画像では2つの品種の比較画像ですが、『Excel』の方は株元を見ることができないほど葉の密度が大きいです。

『O’rourke』を比較対象にした意図は特にありませんが、他の品種は大体上からみると株元が見えるものがほとんどでした。

同じ位置からの写真ですが、茎の付け根の部分の葉が長い部分をめくったどうかの比較になります。

上から実が見えないということは、雨などが直接当たることで果実の品質低下を避けることができると考えられます。

黄色果種だから被害は受けにくいだろうけど、鳥害も軽減できそうだね

雨は幹を伝って株元に届くので、屋外向けの特性と言えるかもしれません

特徴⑥:水切れ判定とリスタートが早い安全重視の生育

20品種ほど育ててみて、生育面において『Excel』の最大の特徴は水切れの判断が非常に早いことにあると思っています。それだけだと欠点のように思えますが、その後のリスタートも早いので「水切れで枯れにくい品種」であると思います。

植物にとって葉とは光合成をするための部位であり、光合成によって栄養素を作り出すことができます。その栄養素を使って体を大きくしたり、果実を作ったりと様々な活動をします。

じゃあ葉っぱがたくさんあればあるほど良いってことだね!

それがそうとも言えない場合が…

植物の成長にとってこの光合成はとても重要なのですが、光合成をするにはどうしても多くの水が必要になってきます。

通常時であれば葉が多ければ多いほど光合成がたくさんできて一気に大きくなることができるのですが、乾燥が進んでくると話は変わってきます。

水が足りない時に、葉っぱが多いとどんどん水が使われてしまうってこと…?

葉をクタッと萎れさせることで、日が当たりにくくなり水の消費を抑制しますが限界があります。早めに水分が補給されないと枯れてしまいます

イチジクに限らず植物は水分が不足してくると、葉を萎れさせたり、傾きを変えるのは葉に光があたる面積を抑えて光合成効率を落とすのが目的であるように思われます。

すぐに灌水を行えば少し傾いた程度なら元通りになるのですが、『Excel』は元に戻ったと思ったらすぐに緑色の葉のまま落葉させてしまいました。

普通は落葉させる時は、葉の中にある葉緑体などを幹に回収してからなのですが、『Excel』はそんなことをせずにすぐ落葉させてしまいます。

せっかく増やした葉緑体を捨てちゃうなんて勿体無いよね

最初は私もそう思いましたが、枯れるよりはマシということなのでしょう。

光合成は水分を消費する化学反応なので、なるべく水分を温存したい水切れ状態だと、水を消費する部位である葉は無い方が水持ちが良くなるはずです。

これはイチジクが「雨が降らなくて乾燥が進んでいる。このままじゃヤバいかも!」と苦肉の策で歯を落としているのだと思います。

👺<判断が早い!

トカゲの尻尾切りのように、損して得をとる感じでしょうか

まとめ:様々な面で安定感のあるバランスタイプの品種

色おけば々と良い点をまとめてみましたが、少しの水切れで一気に落葉して驚いた点を除けば育てやすく優秀な品種でした。

そして何より

味がいい!

の一言に尽きます。

名前負けしていない『Excel』という育てやすく美味しい品種の紹介でした。

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